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12月4日は破傷風血清療法の日

 

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今日は何の日?

12月4日は破傷風血清療法の日

 

1890年この日、エミール・ベーリングと北里柴三郎が、血清療法開発につながる破傷風免疫体を発見したことから、記念日とされています。


血清療法とは、抗体のある血清を患者に注射し、体内に入った毒素を中和して無力化する治療法です。

 

 

日本では感染症法施行規則で5類感染症全数把握疾患に定められており、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出ます。年間100件を超える届出があるそうです。


世界的には、先進諸国での発症症例数の報告は少ないそうで、これは三種混合ワクチン等の普及による所が大きいそうです。


発展途上国では正確な統計ではないが、数十万〜100万程度の死亡数が推定されており、その大多数が乳幼児です。


特に、新生児のへその緒の不衛生な切断による新生児破傷風が大多数を占めます。


また動物においては家畜伝染病予防法上の届出伝染病であり、対象動物は牛、水牛、シカ、馬です(家畜伝染病予防法施行規則2条)。


哺乳類に対する感度が強いですが、鳥類は強い抵抗性を持ちます。年間、牛で約90件、馬で数件の届出があるそうです。

 

 

破傷風は土壌中に生息する嫌気性の破傷風菌 (Clostridium Tetani) が、傷口から体内に侵入することで感染を起こします。


破傷風菌は、芽胞として自然界の土壌中にあまねく常在しています。


多くは自分で気づかない程度の小さな切り傷から感染しています(1999-2000年では23.6%)。


芽胞は土中で数年間生きます。ワクチンによる抗体レベルが十分でない限り、誰もが感染し発症する可能性があります。


芽胞は創傷部位で発芽し増殖します。新生児の破傷風は、衛生管理が不十分な施設での出産の際に、新生児の臍帯の切断面を汚染し発症します。


ヒトからヒトへは感染しませんが、呼吸や血圧の管理が可能な集中治療室などで実施することが望ましいそうです。

 

破傷風菌は毒素として、神経毒であるテタノスパスミンと溶血毒であるテタノリジンを産生します。


テタノスパスミンは、脳や脊髄の運動抑制ニューロンに作用し、重症の場合は全身の強直性痙攣をひき起こします。


この作用機序、毒素(および抗毒素)は1889〜1890年、北里柴三郎により世界で初めて発見されました。


一般的には、前駆症状として、肩が強く凝る、口が開きにくい等、舌がもつれ会話の支障をきたす、顔面の強い引きつりなどから始まります。(「牙関緊急」と呼ばれる開口不全、lockjaw)

 

 徐々に、喉が狭まり硬直する、歩行障害や全身の痙攣(特に強直性痙攣により、手足、背中の筋肉が硬直、全身が弓なりに反る=画像)、など重篤な症状が現れ、最悪の場合、激烈な全身性の痙攣発作や、脊椎骨折などを伴いながら、呼吸困難により死に至ります。

 

感染から発症までの潜伏期間は3日〜3週間で、短いほど重症で予後不良です。


神経毒による症状が激烈である割に、作用範囲が筋肉に留まるため意識混濁はなく鮮明である場合が多いです。

 

このため患者は、絶命に至るまで症状に苦しめられ、古来より恐れられる要因となっています。

 

 

破傷風の死亡率は50%です。成人でも15〜60%、新生児に至っては80〜90%と高率です。新生児破傷風は生存しても難聴をきたすことがあります。


治療体制が整っていない地域や戦場ではさらに高い致死率を示します。日本でも戦前戦中は「ガス壊疽」などと呼ばれ恐れられていました。

 


世界で初めて破傷風菌の純粋培養に成功した細菌学者の北里柴三郎は、早速その菌を使って破傷風の治療法についての研究を始めました。


彼は破傷風という病気が、毒物による中毒と共通の性質を持つことに注目しました。


そこで自分で工夫したろ過器を用いて、破傷風菌の培養液をろ過し、毒素は含むが菌体や芽胞は含まない溶液を抽出しました。


そしてこれを動物に注射すると、破傷風にかかったときと同じ症状を示しながら死亡しました。

 

こうして実験を繰り返していると、溶液の濃度を低くした場合、耐えられない個体と耐えられる個体が出てきました。


そこで耐えられた個体に、濃度を少し高くした培養液を注射してみると、やはり耐える。それを繰り返すと、やがてその個体は、明らかに致死量を超えた毒素にも耐えるようになりました。


動物は、破傷風の毒素に対する免疫を獲得したのだと、北里はこの動物の体内にできているはずの、毒物に耐える物質を「抗毒素」と名付けました。


これが現代でいう「抗体」の最初の概念です。そして抗毒素を獲得した動物の血清を他の個体に接種すると、その個体も毒素に対する免疫を獲得することもわかりました。


一方で北里は、同じ手法をジフテリア菌にも応用し、同僚のエミール・ベーリングを助けてジフテリア血清の研究を進めました。

 


そして1890年、北里はベーリングと連名で、破傷風およびジフテリアの血清療法に関する論文を発表しました。

 

論文の中で、北里は破傷風の免疫を獲得したウサギを使った実験について、次のように述べています。


「破傷風の免疫を獲得したウサギは、猛毒の破傷風菌に対しても、破傷風毒素に対しても、普通のウサギにおける致死量の20倍を投与しても元気である。


また免疫を獲得したウサギの頸動脈から採取した血液をネズミの腹腔に注入しておくと、24時間後に破傷風菌そのものを注射しても完全に健康体であった。


また免疫を獲得したウサギの血液を放置し、凝固させた上澄みである「血清」で同様の実験をしたところ、さらに強力な効果が得られた。」

 

ここで、北里は4つの推論を提示している。
1.破傷風の免疫を獲得したウサギの血液には、破傷風菌の毒素を破壊する特性が存在している。
2.その特性は、採血した血液やその血液から細胞成分を除いた血清にも見出される。
3.その特性は継続的な性質を持ち、他の動物組織においても変わらずに作用する能力があり、その血清の移入は、突出した治療効果をもたらす力があると考えられる。
4.破傷風毒素を破壊する特性は、破傷風に対して免疫されていない動物には存在しない。そして免疫されていない動物に対し破傷風の毒素が接種されると、その毒性はその動物の血液や体液においても機能性を維持した形で検出される。

 

そしてこの論文は、ドイツの文人ゲーテが戯曲「ファウスト」の中で、悪魔メフィストフェレスに語らせた言葉で終わっています。
“Blut ist ein ganz besonders Saft” 「血はまったく特別な液体ですから」。

 


北里が開発した血清療法は、臨床応用が進むにつれて、多くの研究者によって改良が加えられ、破傷風の医療は進歩していきます。

 

とりわけ1926年にガストン・ラモンが作成した破傷風のワクチンは、とくに予防の面において世界中で応用されました。


治療用の血清を製造する過程で用いる毒素液の腐敗防止を目的にホルマリンを混入すると、毒素が不活化することを彼は発見し、ワクチンの開発につなげました。